成人式

今日は娘の成人式
僕の役目は、世話を焼いてくれているお袋と一緒に
晴れ着を持って美容院への送り迎えと、追っかけカメラマン

メール着信のメロディが鳴って、車に乗り込み美容院に迎えに行くと
そこには髪を結いで、化粧して、艶やかな着物に身を包んだ
すっかり別人のように変身した娘の姿
馬子にも衣装とはまさにこのこと…

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その後も成人式会場と我が家と二つの実家を行ったりきたり…

ばあちゃん亡くなってからすっかり落ち込んでいた
お袋が一番張り切っていたなぁ
随分と前から着物も帯も、いろんな小物類も買い揃えていて
今日の日を楽しみにしていた

年末には、晴れ着姿の娘と家族写真を撮るんだと
僕にまで初めての着物を着せて、街の写真館に出かけた

きっと娘の母親代わりの気持ちだったのかも知れない

全てが終わって、お袋が娘の晴れ着の帯を解きながら
『無事に成人式が終わってよかったね』って言って涙ぐんでた

僕一人だったら、たぶんこんなに娘にしてあげられなかっただろう
お袋に心から感謝

みんなの愛情に支えられて、なんとか娘も大人の仲間入り
お陰でまた一つ託されていた仕事が終わったような気がして
久しぶりに、ここに記しておこうと思った…

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明治43年生まれの99歳になるばあちゃん
その左手をさっきからずっと握っています
時々、心拍と呼吸を監視しているモニターのアラームが静かな部屋に響いて
一瞬身体が硬くなる
手を強く握ると痩せ細った掌でぎゅっと握り返してくる…
小さくなっていた呼吸が、また吹き返して深い息をつく…
そんなことを繰り返しています

このばあちゃんの手が好きでした
薬指にはいつも金の結婚指輪が光っていた
長い指、すっきりとした爪、僕の大好きな料理をたくさん作ってくれました
編み物が上手で、眼鏡をかけて編み物棒を動かしている姿が瞼に残っています

仕事ばっかりしてないで、もっと会いにくれば良かったよ
握り締めた掌の温かさが、もっと、もっと、いつもでも続いて欲しい・・・

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息子は高総体で長崎泊り、家に帰っても誰もいない日曜日の夜、仕事帰りにまっすぐ近くのダムまで車を走らせてみた。ダムに流れ込む渓流を少し上がると、そこはたくさんのホタルの乱舞が見られるとっておきの場所がある。家族で毎年のように見に行くようになったのは何年前からかなぁ~。
誰もいない橋の上は、微かに小川のせせらぎが聞こえるくらいに静かで、次第に暗闇に目が慣れてくると、50はゆうに越える淡い光が、あそこにもここにもふわりふわりと瞬いているのがわかる。

こゑはせで身をのみこがす蛍こそ いふよりまさる思なるらめ【源氏物語第二十五帖 蛍の巻】
鳴く声もなく身を焦がす 蛍のような気持ちこそ どんな言葉よりも深く強いものなのでしょう

古人が歌った儚く切ない恋歌のような感情をふと思い出す・・・。
淡雪が舞うように・・・、たくさんのホタルがまるで一緒に呼吸をしているかのように、同じ間隔で命の光を放つのをただぼんやりと眺めながら、静かな幻想世界に浸ってみる。

年に一度の蛍の舞いは、桜の花びらが散るように、今この瞬間を生きている、自分の命の存在に気づかせてくれる・・・。

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僕の住む家の近辺にも、まだまだこんな自然が残っています。

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木漏れ日ロード♪

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日曜日の午後、溜まっていた家事をようやく片付けて、気になる仕事もこんないい天気だとやる気も起こらず・・・、ふらっと車に乗り込む。目指すはお気に入りの木漏れ日ロード♪
こんな日には、エアコンを切って窓を全開、広域農道の少しタイトなコーナーの立ち上がりに、いつもより少し深めにアクセルを踏み込むと、気持ちいい風と一緒に、ガードレールで跳ね返った排気音が心地よく車内に飛び込んでくる。

前にも書いたけど、ワインディングロードを飛ばすには不似合いな4駆のRV車。軽いツーシーターがいいなぁ~。子供がみんな巣立ったら、オープンカーのロードスターに乗るのが夢・・・。ほんとはオートバイも復活したい。歳を取ってからと思っていたハーレーのスポーツスターかドカティがいいなぁ~。でも妻に似て、今では娘がオートバイは危ないからとうるさい・・・。

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車をスローダウンして、ダムの周りの新緑の木立ちから、木漏れ日がキラキラとこぼれる道を走りながら深呼吸してみる。BGMは、Orleansの♪Dance With Meやビートルズの♪Here Comes The Sun(古っ!)がお似合い・・・。
歳も40代の半ばになると、体力も気力も思うように続かない・・・、時にはほっと一息つく時間を・・・、って最近の休日はこればっかだなぁ・・・

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ラベンダーの花摘み

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ゴールデンウィークが過ぎて、軽い5月病の様子の娘が、週末、我が家に帰ってきた。土曜日の夜は三人で温泉に・・・、そして、日曜日、なかなか一人の部屋に戻ろうとしない娘を車に乗せ、長崎まで送りがてら、有田のチャイナ・オン・ザ・パークに行ってみた。
Toshikoメモリアルガーデンには、今年も可憐なラベンダーが咲いていた。
桜と一緒で温暖化の影響なのか、例年より随分早く咲き始めたラベンダーも日曜日が最後の見ごろで、今年は初めてお客さんに花摘みをさせてくれた。

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ストレスや緊張を緩和するといわれるラベンダーの薫りに、仕事に追われ殺伐としていた心がなんだかほっと安らぎ、娘の顔にも笑顔がこぼれた・・・。
そして今、息子と二人で男臭かった部屋にもラベンダーのいい薫りが漂っています。

何時も声を掛けてくれるお店の方が、帰り際、ラベンダーフォトコンテストの応募用紙を渡してくれた。初めてのフォトコン、さ~て、どれを選ぼうかな。

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くるみ

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日曜日、持ち帰った仕事もやる気が出ずに家の中でうだうだしていると、部活が休みで家にいた息子が『天気もいいし、どっか行ってきたら』という。
『一緒に出かけようか』というと『課題が山ほどあるから行かない』と断られた。

確か朝刊に黄菖蒲が咲いたという記事があったのを思い出した。
市町村合併で同じ市域になった北部の広域林道沿いのため池。
町の人が数十年前に植えた株が根付いて増えたらしい。
一人ドライブ、、、新聞記事のせいか、見物人も多い。

僕の歩く前方に熟年の夫婦が黄菖蒲を背景に記念写真を取り合っている。
『そこじゃなくて、こちら側じゃないと綺麗に写らないわよ』
『うるさいなぁ、ここでいいよ』
『もっと笑ってよ、だめだめ、そんな顔じゃ撮れないわ。ちゃんと笑って』
『そんなもん、いちいち笑えるかよ。いいから早く撮れよ』
『折角の記念写真なのに・・・』

『僕がお二人一緒に撮りましょうか』
そう声をかけてみた。
揉めていた二人が、菖蒲の黄色の前に仲良く笑顔で並んでくれた。
こんな夫婦の言い合いも仲の良いしるし。僕には、とっても羨ましく思えた。
素直に声をかけれた自分に驚いてみたけど、やっぱり後から少し淋しくなった。

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 ♪ねぇ くるみ
  あれからは一度も涙は流してないよ
  でも 本気で笑う事も少ない

  出会いの数だけ別れは増える
  それでも希望に胸は震える
  引き返しちゃいけないよね
  進もう 君のいない道の上へ♪

             くるみ/Mr.Children  ♪YouTube

最近、♪ミスチルやBANK BANDの恋歌ばかり聴いているせいか、何もしていない時間は、すっかりセンチメンタルになって、心が痛くなったり、切なくなったり、淋しくなったり、突然、勇気が湧いてきたり・・・少し不安定な心・・・。

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花の匂い

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明日は母の日
ショッピングセンターの特設コーナーには、色とりどりの花が並べられて、そこだけが鮮やかな光に包まれている。
小学生くらいの女の子が暫らく迷って小さなブーケを選んだ。
若い夫婦が何やら相談しながら選んだ鉢植えの薔薇は、どうやら奥さんの意見が通ったようで・・・。
花を買い求める誰もが、大事な人のことを思いながら、優しい表情をしている。

随分と悩んだあげく、僕も二つの花篭を選んだ。
気だけは若いけど、実母は70歳を越え、義母はもう数年で70歳
僕の方が面倒をみなきゃいけない年頃なのに、今でも世話になりっぱなしだ。
なかなか親孝行できないけれど、こんな時ぐらい感謝の気持ちを表さないと・・・
でも何故か自分の母親の前では、相変わらす無愛想な自分がいる。
「いつもありがとう」とだけ、ようやく言えた。
先日、福岡まで車を運転して出かけた義母は、腰痛が悪化したみたいで可愛そう。
暫らくは我が家のことはいいよといっても、毎週金曜日の夕食の用意だけは行くからと聞かない。
笑顔がふと妻の面影に重なってキュンとくる。

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 ♪花の匂いに導かれて
  淡い木漏れ日に手を伸ばしたら
  その温もりに
  あなたが手を繋いでいてくれてるような気がした♪

               花の匂い/Mr.Children   ♪YouTube

 
「私の誕生日と母の日が近くて、つまんない・・・」
5月13日生まれの妻がふくれっ面で言う。
いつもまとめてプレゼントあげて悪かったよ。
君のためにもカーネーションを買ったよ。
また、ひとつでゴメン。

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to U

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「急用ができたんだ、オトウ迎えに来てくれる」
久しぶりにお参りに来てくれていた妻の友人達もちょうど腰を上げようとする頃で、僕も一緒に家を出て水泳大会から帰ってきた息子を学校まで迎えにいった。

「友達のお父さんが亡くなったんだ。お通夜に連れてって欲しいんだけど」
今日のレース結果の話もそこそこに、息子は真顔で話を続ける。
「昨日、部活の途中で呼ばれて帰っていったんだ。心配してたんだけどこんなことに・・・」
「分かった、制服に着替えたら出かけよう」

「母さんの時、小学校の友達があんなにたくさん来てくれたやろ。驚いたけどとても嬉しかったんだ・・・」

式場に着いた時には、もうお寺の住職も帰られて駐車場はまばらになっていた。
息子の友人は違う中学の出身で、表札には始めてみる名前が掲げてあった。
息子は霊前での作法を何度か僕に確かめて一人車を降りた。

玄関から離れた車の中で息子を待っていると、学生服を着た女生徒に何か話しかけながら息子が出てきた。
女生徒は少しだけ息子に微笑んだように見えた。

「ちゃんと言葉かけてあげたのか」
「うん、元気出せよって言ったよ」
車を駐車場から出しながらふとルームミラーを見ると女生徒が一人で玄関の前に立ち、僕らの車を見送りながら、ほんとうに深々と頭を下げたのが見えた・・・。

「あいつさ、いいやつなんだよ。部活も真面目だし、本当は辛いはずなのに元気なふりをして・・・」
「うん、オトウにも感じたよ。だからお前がしっかり支えてあげろよ」
息子は「あぁ」とだけ答えて少し無口になった。

 ♪悲しい昨日が 涙の向こうで いつか微笑みに変わったら
  人を好きに もっと好きになれるから 頑張らなくてもいいよ
  今を好きに もっと好きになれるから あわてなくてもいいよ♪

                     to U/Bank Band  ♪YouTube

友人のことを心配する息子の様子を、僕は少し嬉しく思いながら、心の中でそっと妻に報告をした。

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記念日

「今日も遅くなる?」

朝の補習授業に遅れそうになりながら

鞄に教科書を詰め込んでいる息子が聞く

「うん、ごめん、たぶん今日も帰りは零時過ぎるかも・・・」

「今日、結婚記念日じゃない、仕事早く上がれないの?」

「そっ、そうだったね、でも今大事な時期でね、今夜はやっぱり遅くなるよ」

「そう、じゃあ無理しないでね」

 

すっかり忘れていた4月22日 【よい(4)ふう(2)ふ(2)の日】

僕ら夫婦の19回目の結婚記念日

夜には娘から携帯に電話があった

自分の用事を一通り言い終えた後

「まだ、仕事してるの?○○○が待ってるから早く帰ってあげてね。今日は結婚記念日でしょ」

・・・・・・

僕は一瞬、言葉を無くしてしまった・・・

思えば妻が生きていた頃も、仕事ばかりして

記念日のことはいつも忘れていた

結局昨日は、仕事相手との協議が長引いて、帰宅は1時過ぎ

息子は既にベットの中、寝顔にゴメンと謝ってから部屋を出て

缶ビールのプルを抜く、苦さが喉に染み込んでいく

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そして今日、一日遅れの結婚記念日

24時間営業のスーパーでカスミソウとカーネーションを買って

仏壇に手を合わせた

ごめんね、相変わらず大事なことを忘れてしまって

でも二人の子供達が覚えてくれているなんてね

今でも君の力に守られていると感じる時があるよ

19回目の記念日に乾杯

そして、ありがとう

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Cross Road

長崎の夜景を見ようと稲佐山のワインディングロードを上りながら
遠い昔、妻をサイドシートに乗せて、同じ道を走った夜のことを娘に話し始めた

オトウ達がまだ結婚する前、確か大学4年の頃、おばちゃん(僕の姉)の車を借りて

カアサンと長崎の街をデートしたんだ

異国情緒ある洋館のたたずまいや、坂道や港の風景の中を二人で歩いて

夕暮れ時には少し贅沢な夕食をして、最後の仕上げが長崎の夜景を見るという

いわばお決まりのコースで

ちょうど今、行こうとしている稲佐山に向かって走っていると

最後の交差点を曲がった辺りから、後ろにぴったり付けてくる車がいたんだ

おばちゃんの車は、1300ccのマニュアルシフトの白いファミリーカー

ちょっと無理をするとエンジンは唸り出すし

カーブではタイヤがすぐに悲鳴を上げる

それでもまだ若かったオトウは、国内B級ライセンスの腕を
(誰でも取れるペーパーライセンスなんだけど)

見せようと暫らく必死で引き離しにかかって・・・

でもね、オトウ一人じゃないんだって思い出して、急に怖くなったんだ

大切なカアサンに、絶対怪我はさせられないって

だから車をスローダウンして、ウインカー上げたら

さっさと後ろの車は、オトウ達の車を抜いていったよ

これが始めてカアサンを心から守りたいと感じだしたオトウのクロスロードかも・・・

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娘のホームシックを慰めようと出かけた長崎の街
夜景デートは、迷いの多い僕の心にもチクチクと針を刺してくる
次の朝、すっかり元気を取り戻した娘に見送られて
我が家に向かって海岸線を一人走る
僕の住む街なかの交差点を曲がると、川沿いのハナミズキが
白と紅の可憐な花を満開にさせていた

 ♪遠い記憶の中にだけ 君の姿探しても
  もう戻らない でも忘れない
  愛しい微笑み

  遠く想い焦がれて はりさけそうな夜も
  この手に受け止める つかの間の悲しみは
  やがて輝く未来へと♪

                Cross Road/Mr.Children  ♪YouTube

そして僕もまた、次のクロスロードを越えようとしている

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キャンディー

娘が大学に進学して家を出てから2週間がたった
毎晩のように携帯が鳴る
新生活もなんとか落ち着いてきたようす
電話は、僕への相談や願いごとばかりだけど
用事を話し終えてもなかなか切ろうとしない
話を繋ぎながら、最後には「家に帰りたい」なんて言葉が、、、

そんなに離れた距離でもないのに、もうホームシックか
母親がいたら、もっといろんな話をして励ますんだろうなぁ
それとも車で2時間弱だから、しょっちゅう娘の所へ行ってるかも?

でも今だけだろうなぁ、娘に頼られるのも・・・
彼氏でもできたら、メールもこなくなるんだろうなぁ
そんなことを思いながら、僕が娘に慰められた遠い日のことを想い出した

娘がまだ幼稚園の年中ぐらいの頃
僕は助手席に娘一人を乗せて、その頃エンジンの調子が良くなかった愛車の
ステーションワゴンを見てもらおうと、ディーラーへ向かって国道を走っていた
駅前の信号が赤になって、車を停車線の手前で停めた
それと同時にエンジンもストンと止まった
信号が青に変わる間、必死でイグニッションキーを回してみたけど
エンジンは蘇る気配さえなかった

隣で娘が心配そうに僕を見つめている
「大丈夫だから、そこでじっとしていて」
そう言ってハザードを点滅させ、車から降りると
ずらりと並んだ後ろの車に会釈して、窓越しにハンドルを固定して車を押す
幸い駅前の広場まで道路は平坦で、僕一人でも車はゆっくりと動き出した
広場の手前で、勢いがついてきた車の運転席に飛び乗って
パワステが効かなくなった重いハンドルを思い切り左に切った

時間にしたら数十秒のことだろうけど、幼い娘を危ない目に逢わせたくない
と思う僕には、とてつもなく長い時間に感じた
広場の隅の安全な場所に車を止めてほっとする
娘の顔も笑顔に変わった

とりあえず近くの公衆電話でJAFに電話してレッカーを頼んだ
待ち時間、僕と娘は車の外に出て
僕はガートパイプに腰掛けて、空を見上げていた
調子が悪い車に娘を乗せて、怖い目にあわせてしまった後悔と
これからどうしようかという不安で、僕の心は沈んでいた

「おとうさん、ハイ、これ食べよう!」
娘の声にハッとして、横を見ると
小さな手のひらに、キャンディーが二つ
「おいしいよ、これ食べて元気だそう」
娘のクリクリの瞳が、僕を元気付けようと
にっこり微笑みながら、見上げている
僕はこのときほど娘を愛おしいと思ったことがなかった
そして甘酸っぱいキャンディーの味をかみしめた

外に出かける時、娘のポケットには、いつもキャンディーがあった
「まいったよ、今日はすっかり○○○に励まされちゃった」
家に帰って、その日の出来事を報告した妻に
「私が隣にいなくて良かったでしょ」と笑いながら言われた

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 ♪みっともないけど すべてが愛しいよ
  ふと夕暮れに孤独が爆発する
  甘酸っぱいキャンディーが
  僕の胸のポケットにあるんだ♪

                        CANDY/Mr.Children  ♪YouTube

車のカーステレオにつないだiPodのプレイリストから
最近ずっと♪ミスチルを選んで聴いている
ファンクラブにも入会している息子が入れた多くの曲の中から
僕自身で選曲したお気に入りのナンバーにすっかりハマっている
なかでもCANDYという曲は、胸が苦しくなるようなとても切ないラブソング・・・
歌詞の内容とは違うけど、タイトルに娘との懐かしい想い出が浮かんだ

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HANABI/Mr.Children

スタートのホイッスルが鳴ったのは一年前

ずっと走ってきた 職場の仲間達と一緒に

「そんなこと無理だろう」と心の隅に思いながらも

一つ一つの小さな可能性を 現実のものにするために

少しずつ 少しずつ 積み上げて

ようやく 一つ目のハードルを飛び越えて

着地しようとした時

見えない大きな力に 足をすくわれた

何度も 何度も 話し合って築いてきたことなのに

僕らが一年間やってきたことは何

人を信じることを忘れた捻くれた者は 言葉巧みに人を惑わせ

ルール無用の大きな力を 味方に付ける

僕らの手の届かないところで 行き先が捻じ曲げられる

与えられたもう一つの道は ただ広いだけの灯りもない暗闇の道

僕らの手には 蝋燭の灯りほどしかない

・・・あの日、僕は思いのたけをトップに進言

2、3日考えさせてくれとの返事

ほっとしたのもつかの間 上司が呼ばれ激昂されたらしい

否定したわけじゃない 納得して進めたかっただけ

一緒に頑張ってくれた仲間達の やる気を取り戻したかっただけ

叱るなら 僕を直接叱ればいいのに・・・

  
 ♪一体どんな理想を描いたらいい?

  どんな希望を抱き進んだらいい?

  答えようもないその問いかけは

  日常に葬られてく

 

  考えすぎで言葉に詰まる

  自分の不器用さが嫌い

  でも妙に器用に立ち振舞う自分は

  それ以上に嫌い♪

 
 4月、頼りにしていた先輩を含めて 上司が全て異動

 僕一人だけが残される 異例の人事

 もう一度、トップへの説明

 「あまり無理しないで下さいね」

 仲間の後輩が 出かけようとする僕に声をかけた

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季節はいつの間にか春になって 今日の海の輝きはまるで初夏のように

・・・あの日、海が見たいと思った

昔、きつい事を乗り越えたら よく海を見に行っていた

今はまだ乗り越えてはいないけど 君と約束の海を見てみたかった

  
 ♪逢いたくなったときの分まで

  寂しくなったときの分まで

  もう一回 もう一回

  もう一回 もう一回

  君を強く焼き付けたい♪

                               HANABI/Mr.Children    ♪YouTube

 
分からない 未来は誰にも分からないけど

僕が躊躇うと みんなが不安になる

選んだ道は きっと素晴らしい場所に続いていることを信じて

もう一度 地面を踏みしめて 歩き出そうと思う

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木蘭の涙/STARDUST REVUE

う~ん、困ったなぁ。ちょっと待ってよ。

冬が暖かくなりすぎて、僕の住むところでも桜の開花が
例年よりも随分早くなるらしいとニュースが伝えている。

僕の仕事も、春に向けて一つのハードルが越えられるように
ここまで必死に走ってきたけれど、まだまだ1本目を蹴ったばかり
春が来るのは嬉しいけれど、年々季節だけが早く来るのは困るのだ。

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毎朝、通勤で通る道の傍に大きな白木蓮の木がある。
桜よりも一足先に花を咲かす、この花の蕾がそろそろ開きそうな気配。
かたい蕾を日に日に大きく膨らませて、青空に向けて真っ白な花弁を
ふわりと広げる木蓮の花が、僕は好きだ。

でも、花の名前を知ったのは、実は随分と大人になってからで
暫くはコブシと木蓮の見分けもつかなかった。

知るきっかけは、スターダスト・レビューの『木蘭の涙』という歌♪
木蘭は木蓮を漢語で表すものだとか。
亡くなった愛する人を想う歌詞がとても切ない。
木蘭の蕾を検索して、この花のことだと分かった。

この歌を聴くと、思い出すことがある。
しんみりとしたアコースティックバージョンがウイスキーのCMで使われだす頃
スタレビのボーカルの根本要さんが、僕の住む隣の街で開催されるイベントに
出ること知って、家族4人で見に行った。(2004年3月20日)

息子が名前を良く知らずに、デモトナナメに逢いに行こうと言って
皆を笑わせていたのが懐かしい。
スタレビは、上の子が妻のお腹の中にいるときからコンサートにも行き
浜省の次ぐらいに、当時、我が家の車の中でいつも流れていて
子供達もたくさん歌を知っていたので、生歌が聴けると喜んで付いてきた。

要さんはアコースティックギター1本で、スタレビの名曲の数々を披露してくれた。
「夢伝説」、「今夜だけきっと」、「トワイライト・アヴェニュー」
「ブラックペッパーのたっぷりきいた私の作ったオニオンスライス」
「ふたり」、「追憶」、「1%の物語」、、、
スタンダードソングに混じって、当時新曲だった「本日のスープ」の歌詞を
間違えたふりをして何度も歌って、お客さんに無理やり覚えさせようとしていたっけ・・・

そして、何曲目かに「木蘭の涙」を歌ってくれた。
要さんが立つステージまで、わずか5mぐらいのところに立って聴いていたのに
清んだ歌声が次第に遠くなって、不覚にも僕は涙をこぼしそうになった。
その頃すでに、妻の抗がん剤治療にも限界を感じていて、僕だけが全てを知っていた。
奇跡を信じながらも、目の前に立つ妻は、来年はもう僕の側にはいないのだ。
そんな思いが、振り払っても、振り払っても、頭の中を飛び交った。
もしもあの時、僕ら以外に誰もいなかったら、
きっと僕は、目の前の妻をきつく抱きしめていただろう。

   ♪逢いたくて 逢いたくて
    この胸の ささやきが
    あなたを 探している
    あなたを 呼んでいる

    いつまでも いつまでも
    側にいると 言ってた
    あなたは 嘘つきだね
    わたしを 置き去りに♪

            木蘭の涙/STARDUST REVUE  ♪YouTube

この歌を聴いても、もう泣かなくなった。
それは、青空に向かって咲く木蓮の真っ白な花に
辛い冬を耐えた、生命の息吹を感じられるようになったから、、、
さあ、春がきた。
僕も、負けられない!

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卒業

『最後のお弁当だね、ありがとう、行って来ます』
そう言って、受け取った弁当箱をカバンにしまい
高校生活最後の授業を受けに、出かける娘を玄関で見送った。

4年前、お弁当と食事の用意が一番苦手だった。
初めてのお弁当を作る朝、いつもより2時間くらい早起きして
出来たのは、スクランブルエッグみたいになった玉子焼きと
焦げたウィンナー、茹ですぎたブロッコリー
おかずの味に自信がなくて、ご飯にふりかけをたくさんかけて
ごまかしたあの日

月日が経つと、次第に僕も手抜きを覚えて
いつの間にか、おかずの半分は冷凍ものになっていたり
寝坊した朝も、二人分を10分で仕上げるいい加減な弁当づくり

それでも毎朝君たちは、僕に必ず『お弁当ありがとう!』
の言葉を忘れずに、学校へと出かけていく。
パンよりもオトウの弁当の方がいいと言ってくれる。

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4年前、中学生だった娘は、よくお腹が痛いと言った。
あんまり頻繁に言うので、かかりつけの先生に診てもらったら
『神経性の胃炎です、お母さんが亡くなったこととか、ストレスが原因でしょう』
と先生の診断。
僕の前では涙を見せずに、心配かけないように気を使って、、、
君の小さな胸に抱えた大きな哀しみを、僕はどうすれば癒やしてあげられるのか
分からないままに、、、

時々、逢う人に子供達のことを聞かれる。
高校生の娘がいますと言うと、大抵の人が
『それは良かったねぇ、家事とか娘さんが手伝ってくれるでしょう』と言われる。
僕は『まあ、そうですねぇ』と返事をしながら愛想笑い。
実際は、早朝補習で朝は早いし、夜も部活で家に帰るのは8時前
帰れば課題に追われて、寝る時間もちょっとの娘
家のことよりも二度とない高校生活を悔いのないものにして欲しかった。

それでも最初は、僕も仕事で疲れているし、少しは手伝ってくれるだろうと
淡い期待もあったので、何もしてくれないと腹が立つこともしばしば。
だから途中から、何もしなくて当たり前と考えることにした。
そしたら、たま~に手伝ってくれた日には、有り難くてとても嬉しくなる。

そんな娘も、大学の推薦合格が早くに決まって、心に余裕が出てきた頃
『これから夕食、私が作るよ!』って言い出した。
今までお菓子作りはしても、食事の用意はあまりしなかったのに、、、
味の方も悔しいけど、豚汁も麻婆豆腐も、、、僕より美味い。
『やれば出来るでしょ!』ってちょっと自慢げな様子。
ここのところ毎日帰りが遅い僕に代わって
料理のレパートリーを増やしている。
このぶんだと春からの一人暮らしも、なんとかなりそうだね。

高校3年間、よく頑張ったと思う。
欠席はたったの一日 (過去記事)
朝から君が学校行きたくないよ~と言うたびに
僕のお腹もキリリと痛んだ。
そんな君を支えてくれたのは、いつもの友人達と♪フルートかな
これからもずっと大切にね。

20081011htb11

今朝、『最後のお弁当だね、ありがとう!』だって
そう、それは娘から僕への卒業証書だったかも知れないね。
僕からも君へ、ありがとう!
明日は、娘の卒業式です。

♪こみあげる淋しさに 問いかけたのは
 足ばやに過ぎた 時の流れ

 だけど今 夢がある
 ささやかな 夢だけど
 あしたがあるから♪

             卒業/松山千春 ♪YouTube

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桜まで、もう少し・・・

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気づいたらいつの間にか、庭の紅梅が満開で
仕事に行く途中、寄り道した半島の斜面には
甘酸っぱい香りを漂わせた水仙がいっぱい咲いていた

心の病を患ってしまった後輩
行方の分からない未来
迫られる答え
追い詰められるこころ

そんな毎日にも季節は巡る
厳しい冬にも必ず春は来る
誠実に、焦らずに、対話を重ねて
大切なのは結果よりもプロセス

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吹く風が少し温かくなった
庭の春告草が忘れてた春を教えてくれた
水仙の香りに、無邪気な子供の頃を思い出す
どんなに辛い日々でも、君たちの優しい笑顔にほっとする
次はコブシ、木蓮の花、黄色い菜の花
そして桜、、、
妻が居なくなってから、春を連れてくる花々が好きになった
白木蓮の花が咲く頃には、海もキラキラと輝いて
潮の香りを嗅ぎに、海まで走りたいなぁ~

桜まで、もう少し、、、

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